ついにこの時が来てしまいました。
僕が喉から手が出るほど欲しかったカールツァイスのマクロプラナー。何度も悩んだ末にいつの間にか喉から生えてきました。
「こうやってレンズって生えてくるんだな」なんて思いながら丸一日撮影を楽しんできたのですが、有無を言わさず最高のレンズです。異論は認めません。
今まで単焦点ってあんまり好きではなくて、「ズームレンズ便利だし大三元揃えときゃ大丈夫」くらいに考えていたのですが完全に別世界。
標準域はこのレンズ以外もう考えられないくらいに素晴らしいレンズでした。
2019/06/02追記:改めて、マクロプラナー偏愛記事を書きました。本当に素晴らしいレンズです。
「Planar 50mm F1.4」と「Makro-Planar 50mm F2」の違い
当初は「Carl Zeiss Planar T* 1.4/50」というレンズを買う予定でした。僕が初めて買った交換レンズで、強い思い入れもあったので買い戻そうかと。
結果的には長く憧れていた「Carl Zeiss Makro-Planar T* 2/50」という同じようで大分違うレンズを購入。
この似た名前のふたつのレンズ。ざっくり見ると違いはこんな感じ。
Planar T* 1.4/50 | Makro-Planar T* 2/50 | |
焦点距離 | 50mm | 50mm |
開放F値 | F1.4 | F2 |
最大撮影倍率 | 0.15倍 | 0.5倍 |
フォーカス方式 | MF(マニュアルフォーカス) | MF(マニュアルフォーカス) |
購入方法 | まだ新品で買える(生産終了) | 中古のみ(生産終了) |
価格 | 新品で7万円くらい | 中古で9万円くらい |
はい。すでにどちらも生産終了してます。
今なら通常のプラナーはまだ真っ当な金額で新品を購入する事ができますが、マクロプラナーに至っては中古なのに発売当時の新品くらいの値段です。つらい。
通常のPlanarの最大撮影倍率については公式サイトに記載がないものの、「最短被写体距離での映像比」が1:6.7との事なので、0.149倍です。対してMakro-Planarは名前にマクロを冠するだけあり、0.5倍まで寄れるハーフマクロとなっています。
個人的にはマクロ撮影を楽しみたい時はSONY SEL90M28Gを引っ張り出してくればいいし、実際等倍マクロまで寄りたい事ってそうそうありません。
「より明るいレンズが欲しいなら通常のプラナー、より寄れるレンズを求めるならマクロプラナー」になるのですが、個人的には明るいよりは寄れるほうが表現の幅が広がると感じています。
僕は必ずしも寄って撮らなければいけないわけではない(遠景も撮れる)マクロレンズが好き。
マクロプラナーには50mmモデルと100mmモデルがあるのですが、今回僕が選んだのは50mmモデル。付けっ放しにできるくらいの相棒にできる標準レンズが欲しかったからと言うのが大きな理由です。
いろんな作例を見る限り100mmも欲しくてたまらないです。
今回僕が買ったのはNikon FマウントのZF.2と言うモデル。ツァイスのレンズは他にもEマウントのZE, KマウントのZK, MマウントのZMとかあるので、適宜自分に合ったレンズを使うと良いです。
Carl Zeiss Makro-Planar T* 2/50 ZF.2 レビューと作例写真
前置きが長くなりましたが、やっと本題。
今回はX-Pro2とα7IIIの2台にこのレンズをつけて撮り歩いてきました。(と言っても使ったのはほとんど一台でしたが)
個人的には大満足なので、ぜひ見てやってください。
「Carl Zeiss Makro-Planar T* 2/50 ZF.2」とFUJIFILM X-Pro2
X-Pro2にマウントアダプターを付けてこんな構成。
X-Pro2はAPS-Cセンサーなので35mm判換算で75mm。人を撮るのにちょうどよい焦点距離ですよね。
というわけで撮ってみました。
わかる。なんでこのシーンなのって感じですねわかります。
次女ちゃんがデジタルハリネズミで一生懸命アジサイを撮ってるのがかわいくて天使だったので仕方ないと思います。
ちなみに玉ボケは正円にはならず、八角形?九角形?ちょっと残念だけど、これはこれでおもしろいのでOK。
全身を撮るのにもちょうど良いレンズ。背景でウシがボケてますが、とってもフリーダムな秋元牧場というところに行ってきました。
なんかほんとフリーダムなので、横にあった鋤?みたいなやつ持って一枚。
こうして見ると感じると思うんですけど、まぁキレイに写るレンズです(後ろのボケはちょっとザワついてるけど)。MFのみなので大変といえば大変なのですが、それがまた楽しい。ピントがバチっと決まった時の写りは思わずため息が出ますから。
でもなんかあんまり特徴のない絵ばっかりだなぁと色々いじりながらも、ようやくまともに撮れた一枚がこれ。
そうそうこういうの撮りたかったの。分かるこれ撮りたかったの。
この後何枚か撮って見たものの、なかなか他にはグッとくるものが撮れず、「やっぱり僕は単焦点は合わないのかなぁ」なんて思って半分諦めてました。上の写真もなんかいい雰囲気だけど、なんか他のレンズでも撮れるんじゃないの?って思わなくもない。猜疑心が膨らんでいく。
「Carl Zeiss Makro-Planar T* 2/50 ZF.2」とSONY α7III
描写については諦めつつも一応両方のカメラで撮っておかないとと思いつつα7IIIへ付け替え。
ここで世界が変わりました。
これは単純に僕がX-Pro2の設定で何かミスってるのか、もしかしたらGレンズ対応の絞り環がついたアダプターが良くなかったのかもしれませんが。
ちょっと見てくださいこれ。
すごくクッキリしてるし発色も良い…良いぞ…!!
と俄然やる気を取り戻したので色々設定いじりつつ撮ってみたりするわけです。
馬の尻尾の描写だとか、筋肉とか浮き立つ血管とかもう全部すげぇ。
動体にMFでピント合わせるのは大変だけど、動かないアジサイとかならがっつり時間をかけて合わせられるしもう最高。
転がってた壊れた計器なんていうのも、この質感ですよ。
こういう金属やら錆びやらの質感を出すのは本当に得意なレンズで、寂れた感じが好きな僕としては最高。
開放だとピントが本当にうっすうすなんだけど、柔らかい描写もお手の物です。
前ボケもキレイだし、遠景にピントを合わせても細かく解像しててもう好き。
めっちゃいい。なにこれめっちゃいいんだけど。
物憂げにうつむいている様に見えるけど、足元に虫がいて動けなくなった娘です。
なんか古びて固定してあるマッシーンがあった。
これ、すごく良くないですか?さっきも言ったけど金属の質感がもうたまらないよ。
やっぱり光の取り込み方がすごくキレイで、光が射している部分と影になっている部分の描き分けが素晴らしいんだと思うんです。むっちゃくちゃ好きですこの感じ。
カリッと撮りたいときは少し絞ればいいだけですから。いいじゃないですかさすがツァイス。
この秋元牧場、ところどころ廃墟みたいな雰囲気醸してて最高なんですよ。(褒めてる)
MF(マニュアルフォーカス)のレンズを使ってると、積極的に前ボケを作りたくなるのは僕だけじゃないですよね。
ただ撮っただけでもなんか味のある写真になってしまう。
Carl Zeiss Makro-Planar T* 2/50 ZF.2 が描く光と影
ここまで見てくれて、鋭い人は気づいたと思うんですけど、開放で撮ると口径食によって結構な勢いで周辺光量落ちします。でもってその周辺落ちがすごく良い味になってます。
X-Pro2で撮った時はただキレイなレンズにしか見えなかったのは、APS-Cなので落ちてる周辺部分が切り取られるからだったんだな、と。
僕は別に周辺落ちが大好物と言うわけではないのですが(どちらかと言えば好きです)、なぜこんなにも美しいのかと考えると、カールツァイスのレンズは光を描くのが上手いレンズだからなんじゃないかと。
光を美しく描き切るからこそ、周辺光量が足りない事が相乗効果でプラスに働いている気がします。
この写真は、木漏れ日が差し込むアジサイが美しくて撮った一枚。
こう言った情景を見たままに写すのってすごく難しくて、いつもマスク処理してRAW現像でそれっぽくしてしまうのですが、この写真は撮って出しです。
光の当たっている部分も破綻なく写り、影になる部分もしっかりと残して描写してくれるので、さっとこう言った写真が撮れるんだと思うんですよね。
「カールツァイスは空気まで写す」なんてよく言われるのですが、難しい事は分からないけどそう言う事なんじゃないですかね。
こう言った何気ないスナップを撮ってもそれっぽい感じでフワッと誤魔化せるのは、光と影の濃淡が緻密に出ているからなんじゃないの?なんて思ったりするんですけど、正直良くわかりません。
とりあえず僕から言えるのは、2枚目左側のネコ。あんな顔してるけど、あれ、寝てます。
光が射すところへ向かいたくなるレンズという言葉が相応しいレンズではないでしょうか。
何を撮ってもため息が出るほどの写りを見せてくれるレンズなんてそうありませんが、すくなくともこの「Makro-Planar T* 2/50 ZF.2」はそれだけの価値があります。さっきからなんども言ってるけど、こう言う廃屋すきなんです。この質感で写せるのは嬉しい。
時間を切り取る写真が撮りたい
少し話が逸れるのですが、最近密かに僕が目標としてる写真に「今にも動き出しそうな写真」というものがあります。
言葉にするのが難しいので今まで書いていなかったのですが、躍動感がある写真とかではなくて。時間を切り取る、空気を切り取る、という表現が一番しっくり来るのかもしれません。
写真を見て、前後の瞬間までを感じる事ができる様な。そんな写真が撮れる様になりたいなと。
これは別に人に限った事じゃなくて、無機物でも同じ。
前半で紹介した写真を再掲しましたが、この写真は僕がイメージしている写真に少し近づけたかな、というもの。
ただキレイな写真じゃなくて、動く写真というか。動かないんだけど。
その写真を見た人の五感に何かが届く写真って言えばいいのかな。音とか、風とか、触感とか。そう言った何かが届く様な写真が撮りたいんです。
今までそう言う写真ってほとんど撮れていなくて、どうしたら撮れるのかと悶々と悩んでいたのですが、今回この「Carl Zeiss Makro-Planar T* 2/50」を手にして、少し答えに近づいた気がしました。
どこまでも抜ける様な空気感。光の濃淡。
少し重い空気を纏った様な、真綿の様な写真が撮れるレンズです。
Carl Zeiss Makro-Planar T* 2/50 ZF.2 標準レンズはこれで決まり
これ以上望む必要のないレンズに巡りあう事が出来て、僕の世界は変わりました。
標準レンズはこれ一本。十分以上のレンズだと思います。
AFなんて便利なものはないですが、この描写を見てしまうとそんなのはどうでも良くなります。多少ピントが甘くなってもいいじゃないですか。ピントよりも大切なものがありますって。たぶん。
今までズームレンズ至高主義で大三元レンズをずっと追い求めてきたのですが、「描写力なら単焦点」というのが良くわかりました。
今後は「Makro-Planar T* 2/100 ZF.2」を探し求める事になりそうです。なんでディスコンになってしまったのかつらい…。
MFレンズなのでもちろん不便が多いことは承知で言いますが、本当に買って損しない一本だと思います。中古しかない上に発売当初の新品くらいの値段がするレンズですが、全力でお勧めできるレンズです。
中古でも残ってる今しか買うチャンスはありません。気になっている方は今のうちに買ったほうが幸せになれますよ!!
おまけ:マクロプラナー、ハーフマクロの全力
せっかくのハーフマクロなのに、マクロらしい寄った撮影がほとんどありませんでした。
「どこまでも寄れる」というのは魅力なのですが、意識しないと最短まではなかなか寄らないんですよね。
と言うわけで、最短撮影の写真を2枚ほど置いておきます。
美味しかったです。
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